読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

料理漫画を研究してます

料理漫画研究家としてのあれこれをここに書いていこうかと思います。 お仕事のご依頼はkei.sugimuraあっとgmail.comまで!

岡星さんや中松警部や快楽亭ブラックさんのエピソードを教えて下さい [INTERVIEWS記事]

美味しんぼ (62) (ビッグコミックス)

美味しんぼ (62) (ビッグコミックス)

Q.岡星さんや中松警部や快楽亭ブラックさんのエピソードを教えて下さい

これは難しい質問です。そして、いい質問をありがとうございます!

岡星さん、中松さん、ブラックさんそれぞれの結婚に至るまでのエピソードという形でよろしいでしょうか? もし違うのでしたらお手数ですが再度質問をしていただけたらと思います。例によってネタばらし全開なので、気になる方は注意してください。


まずは岡星さんからいきましょう。

美味しんぼ屈指の名バイプレイヤーであり、山岡さん達も何か困ったことがあると相談に行く岡星店主の岡星さん。初登場は意外にもかなり早く、1巻4話「平凡の非凡」でした。あの京極さん(そう、京極さんの初登場も同じ回です)を接待するために超一流の料亭である銀座の花川に行った文化部の面々。しかし、花川は内部のごたごたのせいで味が落ちていていい加減な料理しか出てこなかったため、京極さんは侮辱されたと感じて席を立ってしまいます。そこで山岡さんがいつもの通り「どうです、明日もう一度ごちそうさせてくれませんか?」と提案したのですね。とはいっても、花川以上のお店がそうそうあるわけではありません。そして山岡さんは銀座の店を知り尽くしているという、浮浪者の辰さんに相談をするのです。その辰さんが「あそこが今、ダントツだね!」と太鼓判を押したのが岡星だったというわけです。

その後もいつの間にか、山岡さんが何かしらの実験をするときに使うお店として岡星は登場します。3巻5話「醤油の神秘」では、花村さんが一目惚れをした青年の持っていたおせんべいに使われていた醤油の謎を解き明かすため、岡星で効き醤油をします。4巻7話「板前の条件」では、岡星の味が忘れられない京極さんがお店を訪れます。ここで後の最重要人物の一人、岡星の弟さんの良三君が初登場するのですね。この時点で美食倶楽部の料理人だったのですが、大失敗をして海原雄山を怒らせてしまっています。そう、あの有名な「このあらいを作ったのは誰だあっ!!」というシーンがここで登場するのです。

そしてとうとう5巻3話「技巧の極致」では、他店で山岡さんの指示に従って料理を出すという、出張料理をも始めるのです。その後もちょくちょく山岡さん達のたまり場になる岡星(お店)。6巻6話「日本のコンソメ」ではちょっと後ろを向いていてくださいと言われた隙に超能力者の人がお客さんをみんなテレポートさせてびっくりするというお茶目なところも見せてくれます。さらに8巻6話「二代目の腕」では天ぷらやを継いだ友人に対して何かアドバイスは無いかと山岡さん達に相談をしたりもしています。

ちなみにこの岡星さん。フルネームを岡星精一と言います。みんな岡星さん岡星さんと呼んでいてなかなか本名が出てこないのですが、10巻8話「潮風の贈り物」において海原雄山に挨拶する際に名乗っているので本名がわかったというわけです。

そんな岡星さんの恋物語は25巻6話「年越しうどん」で明らかになります。実は岡星さんにはその昔、将来を誓い合っていた冬美さんという女性がいたのでした。ですが、その冬美さんは今までに一緒になった男性2人と死別をしていたのです。そして、自分は不幸にとりつかれた女であり、これ以上岡星さんと一緒にいると岡星さんが不幸になると思い込んで失踪したのでした。そんな冬美さんを良三くんがスキー場で見かけ、長野に駆けつける岡星さん。必死に説得する岡星さん。そして、二人の思い出の料理、鍋焼きうどんのおかげで氷に閉ざされていた冬美さんの心が溶け、二人はまた一緒になるのでした。


さて、お次は中松警部です。

彼も美味しんぼ世界の脇を固めるのに欠かせない人物です。初登場は2巻3話「そばツユの深味」ですね。日本蕎麦の屋台、珍しいお店に山岡さんと栗田さんが入って蕎麦を食べている時に登場します。そう、中松警部は無類の蕎麦好きなんですね(伏線です)。その屋台は実は来週申請が降りることになっているんですが、許可が下りるとわかったら一日も早く営業したい!! ということでこっそり営業していた無許可店だったのでした。そしてその蕎麦を食べた中松警部はこう言うのです。「蕎麦とつゆとの釣り合いがとれていない」と。そこで、中松警部をぎゃふんと言わせる蕎麦つゆができたら許可証を渡す、駄目だったら許可証はあきらめろという無理難題をふっかけるのです。まあ、例によって山岡さんの企みでその店主はそばつゆを作り上げることができるのですが、そういう初登場だったのでした。

その後、警察絡みだと中松警部が登場します。3巻1話「炭火の魔力」では酔っ払って暴れたうなぎ職人取り押さえてみたり、5巻4話「スパイスの秘密」では警察に保護された記憶喪失のコックコートを着た人を保護したり、9巻7話「最高の肉」において栗田さんが捕まって取り調べを受けている時に助けに来たりしてくれました。

そんな中松警部の恋のお相手。それはアイスクリームハウスうたこの店主、水森歌子さんです。7巻2話「氷菓と恋」ですね。恋は盲目とはよくいったもので、中松警部は流行らないうたこの為に、六本木や青山の人気アイスクリーム店の味を盗もうとするのです。色々とあってアイスクリームが美味しくない謎も解け、中松警部の歌子さんに対する思いも通じ、ウェディングケーキもアイスクリームでなんて言い出すぐらいになりました。

中松警部を語る上では、彼のライバルも出てこなければなりません。それは、中松警部率いる銀座中央署剣道部のライバル、新宿南署の大石警部です。初登場は20巻6話「カキの料理法」になります。その大石警部は歌子さんのお店ICE CREAM UTAKO(改装して名前がアルファベット表記に)のアルバイト、みさ子さんに一目惚れをするのです。

そして53巻6話「猫が怖い!?」において、とうとう中松警部と歌子さんが結婚を決意します。同時に大石警部とみさ子さんも結婚を……と、思いきや、大石警部には猫が嫌いという弱点があり、みさ子さんは猫が大好きという深刻な問題があったのでした。このままでは結婚ができないと悩む大石警部。そんな時にみさ子さんが交通事故にあってしまうのです。幸い命に別状が無く軽傷で済んだのですが、大石警部が入院中の猫の世話をしなければなりません。山岡さんから教わった治部煮により、何とか猫と仲良くなることに成功した大石警部。この2人も結婚へ向けて進んでいくことになります。

60巻4話「水対決」では中松警部、歌子さんの式の日取りが決まり、山岡夫妻に披露宴の献立の相談をしています。そして、61巻8話「盲点の食材」では、中松警部達と大石警部達が合同結婚式を行うことが決まったのです。さらにはここでブラックさん達とも合同結婚式を行うことが決まります。というのも中松警部の銀座中央署の署長と大石警部の新宿南署の署長が犬猿の仲で互いにあいつが結婚式にくるなら俺は出ないと言い張り、中松・大石両警部を困らせていたのでした。そこを解決させるために山岡さんが手を打ってブラックさん達ともさらに合同結婚式を行うことを決めたのです。

そしてとうとう結婚式が行われたのが62巻3話「低予算披露宴対決!」です。中松警部にいたっては、7巻の発売日が1986年で、62巻の発売日が1997年なので11年越しに結婚したというわけですね。


最後はブラックさん。

7巻5話「大豆とにがり」にて初登場します。登場時はヘンリー・ジェームス・ブラックです。料理研究家、そして豆腐研究家として登場するのですね。ところでブラックさん。ヘンリー・ジェームス・ブラックと名乗っているのに、そのあと山岡さん達といく豆腐屋ではスタン・ブラックと名乗っています。ヘンリー・ジェームスの愛称がスタンとなるかというとそうではありません。この問題のおそらくヒントになるのは、ブラックさんが「これが私の書いた本です」と差し出した「THE BOOK OF TOFU」にあるのでしょう。よくよく見ると、著者名と思しきところに「STAN BLACK」と書かれています。なので、豆腐研究家としてのペンネームがスタン・ブラックであり、豆腐店への取材時はこのペンネームを名乗ったと解釈することができます。

ちなみにブラックさんはこの豆腐騒動の時にたまたま山岡さん達と一緒にいた快楽亭八笑師匠にその場で弟子入りをします。ここから、快楽亭ブラックが誕生したのです。

その後のブラックさんは7巻7話「黄身と白身」において、国際目玉焼き会議(IFEC)の委員の一人であり、同会議に文化部の面々を招待したり、9巻6話「日米味決戦」では同じアメリカ人のジェフとともに、日本人とアメリカ人の味覚の違いについて説明するときに登場したりと、国際的な話題のときにたびたび登場し活躍しています。

そんなブラックさんの浮いた話は12巻5話「豆腐の花」に出てきます。お相手はテルコ・テルエのテルテルコンビという女漫才のテルエさん。初登場時はなんと過労による入院をしていて、ブラックさんがなんとかして滋養のある物を食べてもらおうという回でした。生粋の江戸っ子であるテルエさんは、滋養のあるポタージュスープとかを頑なに飲もうとしません。そこでブラックさんが呉汁を作って食べてもらうのです。あ、ちなみに最初からこの二人はラブラブでした。

そんなブラックさんはやっぱりアメリカ人ということで、日本食の文化の壁にたびたびぶち当たります。23巻10話「白身魚の芸」では白身魚の繊細な味わいが、27巻3話「父のコロッケ」では落語の「子別れ」のような、日本特有の男女の機微が、わからず苦しむブラックさん。でもそんなときでもテルエさんはブラックさんを支え続けるのでした。

そんな二人に最大の危機が訪れます。52巻2話「愚かさの味」です。とうとう結婚を決意したブラックさんとテルエさんですが、テルエさんのお父さんが「アメリカ人との結婚は許さない」と言い出したのです。というのもテルエさんのお父さんは東京大空襲の経験者。空襲時に家族を全て失い天涯孤独になっています。そんなお父さんがはアメリカが「原爆が戦争終結を早めた」と言うのがどうしても許せなかったのでした。ですが、ブラックさんのお父さんから、兄(ブラックさんの伯父さん)が日本軍の捕虜として亡くなった話を聞かされ、憎しみの心を次世代まで持ち込むべきじゃないと反省し、テルエさんのお父さんはブラックさん達を祝福するのでした。

ブラックさん達の結婚がきちんと決まったのは61巻8話「盲点の食材」です。両方の師匠からのお許しが出て、ようやく結婚できるようになったのです。そこで、結婚を決めましたと山岡さん達に報告をしたらその場で中松警部達、大石警部達との合同結婚式が決まったのですね。よくよく考えると山岡さん、結構強引かも。

そして、62巻3話「低予算披露宴対決!」にて3組の結婚式が開かれました。ここでも究極のメニューと至高のメニューの対決になっています。何故低予算披露宴になったのか。それは、テレビ番組「現代を斬る」において、究極のメニューと至高のメニューこそが腐敗と堕落の象徴であるとばっさりやられたからです。ぜいたくしている場合ではないじゃないか、と。それに対する反論も含めて、究極のメニューと至高のメニューはこの合同結婚式において、低予算のメニュー対決を行ったというわけなんですね。3組も、費用を東西新聞と帝都新聞が持ってくれるということで大歓迎でした。


これらのカップルはその後も続々と話に絡んできます。それぞれの新婚生活は64巻に出てきたりするのですが、長くなりすぎたのでこの辺で。

↓合同結婚式が行われた巻です

美味しんぼ(62) (ビッグコミックス)

美味しんぼ(62) (ビッグコミックス)