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美味しんぼの中に登場する究極と至高の対決ってどういう経緯ではじまったんですか?あと今現在の究極と至高の勝敗はどれぐらいなのですか?[INTERVIEWS記事]

美味しんぼ (15) (ビッグコミックス)

美味しんぼ (15) (ビッグコミックス)

Q.美味しんぼの中に登場する究極と至高の対決ってどういう経緯ではじまったんですか?あと今現在の究極と至高の勝敗はどれぐらいなのですか?

これは素晴らしい質問です。美味しんぼという偉大な作品の根幹である、究極のメニューと至高のメニューの対決。この関係を整理し、記録をつけることは料理漫画研究的にも非常に重要なことだと思います。

ただし、ここで一つ注意しなければならないことがあります。それは、基本的には僕は料理のネタばらしをしたくないということ。だって、美味しんぼでどんな料理が出てくるかがわかったら少し興が冷めちゃうじゃないですか。なので、他の質問でも人間関係のことを中心に書いてきました。今回も各対決のリストをつくりますが、詳細は書いていくのはやめようと思います。あらかじめご了承ください。


さて、究極のメニューですが、こちらは1巻1話「豆腐と水」から登場します。そう、最初の最初から登場するメインテーマなのですね。これは東西新聞100周年記念事業として大原社主の肝いりで始まった事業です。

そもそも人類の歴史は食の文化でもあります。歴史上、たとえばルイ王朝の晩餐会のメニューや、秀吉の聚楽第での大宴会のメニューとかはその時代の文化を知る上で貴重な文化遺産となっています。そこで、あらゆる国の料理を輸入し、多彩な食文化を持つ日本において、あらゆる美味珍味から選りすぐった、後世に残す文化遺産としてのメニューを作る……というのが究極のメニューの目的なのです。その担当になるためのテストが、豆腐の産地当てと水の水質当てだったのですね。


そして至高のメニューですが、意外と登場は遅く、15巻1話「究極VS至高」で登場します。東西新聞のライバルである帝都新聞が同じコンセプトで至高のメニューを発表すると新聞に載せたのですね。究極のメニュー側はメニュー作りを先に始めていたものの、全て完成してから大々的に発表するつもりで紙面には載せずに、こういうことをやるという告知だけをしていました。ところが、至高のメニュー側は毎月1メニューずつ載せるということを先に発表してしまったのです。いわば、究極側は、完全に隙をつかれて不意打ちをくらった形になります。かくして究極のメニュー側も至高のメニューに対抗すべく、緊急会議を開いて同じようにメニューを小出しにしていくことを決定したのでした。


その新聞社同士の抗争を鋭くかぎつけたのが週刊タイム誌です。週刊タイム誌が究極のメニューと至高のメニューと、対決をして雌雄を決しましょうと。そしてその対決をタイム誌上でやらないかと提案をし、双方が合意したというわけです。中立の立場の週刊タイム誌が審査員を用意し、実際にそれぞれがメニューを作って対決することが決まりました。かくして、東西新聞の究極のメニュー(山岡)VS 帝都新聞の至高のメニュー(海原)の対決が、週刊タイム誌上で掲載されていくという形になったのです。


さて、究極VS至高はこのようになるのですが、山岡さんと海原雄山先生が料理の競作をし、戦うという図式はもっと前からありました。第5巻3話「技巧の極致」では鯛料理比べをしています(山岡さん側の料理人は岡星さんです)。同じく5巻8話「もてなしの心」では海原雄山先生の師匠でもある人間国宝の唐山陶人先生の披露宴において、飯と味噌汁の競作をします。そしてその後も競作は何度となく出てくるのです。さらにはどちらかがどちらかを一方的にへこます(つまり、片方しか料理をしていない)対立はたくさん出てきます。この辺の勝敗は入れるかどうかはちょっと悩ましいのですが、今回は入れないことにしましょう。さらに、究極対至高の対決において、いくつか勝敗が決しなかったものもあります。これは審査シーンが無かったり、相手を勝たせるためにわざと落ち度を作ったり、それに気づいた勝者側が勝敗は無効だと後から言ったりというものです。その場合も、審査員が宣言した勝敗をベースに勝敗の結果をつけました。つまり、後から勝者側が無効と言ったのはカウントしていないというわけです。

さらにちょっとだけ補足を。究極VS至高の戦いは現在でも続いておりますが、究極側も至高側も代替わりをしております。究極側は東西新聞社の飛沢くんが、至高側は美食倶楽部の若手の星である岡星良三くんが中心となって進めております。従って、後継者同士の戦いが始まる前の、山岡さんと海原雄山先生がそれぞれ互いの陣営の中心となって戦っているところまでで区切らせていただきたいと思います。


究極対至高の対決リスト(102巻まで。最新刊は2011年9月現在で107巻)

1回戦は卵料理対決(15巻1話「究極VS至高」)
2回戦は野菜対決(16巻5話「対決!! 野菜編」)
3回戦は餃子対決(17巻1話「餃子の春」)一応は番外編になるのですが、週刊タイムに載ったので3回戦ということで。
4回戦はエイ料理対決(17巻2話「エイと鮫」)
5回戦は生肉対決(18巻1話「生肉勝負!!」)
6回戦……と言いたいのですが、次は番外戦になります。村おこしのための名物作り勝負(19巻1話「対決!村おこし」)です。
本当の6回戦は蒸し焼き対決(20巻4話「蒸し焼き勝負」)
7回戦は牡蠣対決(20巻6話「カキの料理法」)
8回戦は豆腐対決(22巻2話「豆腐勝負!!」)
9回戦は鰹対決(23巻4話「カツオのたたき」)
10回戦はカレー対決(24巻1話「カレー勝負」)
11回戦はスパゲッティ対決(25巻1話「対決!! スパゲッティ」)
12回戦はお菓子対決(26巻4話「菓子対決!!」)
13回戦は披露宴料理対決(27巻2話「究極の披露宴」) これは荒川さん田畑さんの結婚式です
14回戦は長寿料理対決(28巻2話「長寿料理対決!!」)
15回戦は鮭対決(30巻5話「鮭勝負!!」)この手前から団社長が週刊タイムの出版社を買収して登場してきます
16回戦は鍋対決(31巻5話「鍋対決!!」)
17回戦は豆腐対決再び(32巻6話「新・豆腐勝負」)
18回戦はオーストラリア料理対決(33巻3話「魅惑の大陸」)
 ここだけちょっと解説を加えますと、東西新聞の企画であるオーストラリア年の一環として、世界味めぐり(二木さんが山岡さんと一緒に仕事をするきっかけの雑誌)においてオーストラリア特集を組むことになります。そして海原雄山先生もオーストラリアで個展を開くので、それだったらオーストラリアで究極VS至高を実現しちゃいましょうという団さんの企みにまんまと二人とも乗ってしまったのでここから先はちょくちょくオーストラリア対決になります。

19回戦はサラダ対決(34巻5話「サラダ勝負」)
20回戦はサウス・オーストラリア対決(35巻2話「豊穣なる大地」)
21回戦はおかず対決(35巻5話「おかず対決」)
22回戦はアボリジニー料理対決(37巻2話「激突 アボリジニー料理!!」)
23回戦はオーストラリアが我々に与えてくれる夢(40巻2話「オーストラリアン・ドリーム」)
24回戦はおせち料理対決(41巻6話「おせち対決」)
25回戦は朝食対決(42巻4話「愛ある朝食」)
26回戦はクイーンズランド対決(44巻1話「熱闘! クイーンズランド」)
27回戦は究極のメニュー・至高のメニュー完成発表会(47巻3話「結婚披露宴」)

ここでいったん一区切りがつき、金上社長という美味しんぼ史上最悪の強敵が現れます。対決再開まで結構間があきます。

28回戦はニューサウスウェールズ州対決(59巻2話「対決再開! オーストラリア」)
29回戦は水対決(60巻4話「水 対決」)
30回戦は低予算披露宴料理対決(62巻「低予算披露宴 対決!」)

そしてここから日本全県味めぐりという企画がスタートします。県をひとつひとつめぐって、その県の食材を使い、県独自の料理方法を探してそれを取り入れた究極のメニューと至高のメニューをつかって対決していくのです。

31回戦は大分県対決(71巻1話「日本全県味巡り大分編」)
32回戦はチーズ対決(73巻1話「チーズ対決!!」)
33回戦は宮城県対決(75巻2話「日本全県味巡り宮城編」)
34回戦は大阪府対決(77巻5話「日本全県味巡り大阪編」)
35回戦は山梨県対決(80巻2話「日本全県味巡り山梨編」)
36回戦はイタリア料理対決(81巻3話「イタリア対決!!」)
37回戦はおむすび対決(82巻6話「おむすび対決」)
38回戦は富山県対決(84巻1話「日本全県味巡り富山編」)
39回戦は高知県対決(87巻3話「日本全県味巡り高知編」)
40回戦は器対決(88巻5話「器対決!」)
41回戦は医食同源対決(94巻2話「医食同源対決!!」)
42回戦は長崎県対決(98巻1話「日本全県味巡り長崎編」)
43回戦は青森県対決(100巻1話「日本全県味巡り青森編」)
44回戦は相手を喜ばせる料理対決(102巻1話「究極と至高の行方」)
これについてすこし補足すると、審査員を喜ばせるのではなく、究極側は至高側を、至高側は究極側を喜ばせる料理対決となります。

そして、この44回戦目の戦いで、山岡さんと海原雄山先生の和解が成ります。それはニュースとして各種媒体に掲載されたのでご存じの方は多いでしょう。この44回戦目をもって山岡さんと海原雄山先生との対決は1段落。後継者の飛沢くんと良三くんの戦いへと移っていくのです。

ここまで44回戦+1番外編の勝敗は、究極側の視点で言うと

9勝14敗21引き分け1審査無し

となります。


↓ここから究極vs至高が始まりました

美味しんぼ(15) (ビッグコミックス)

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