料理漫画を研究してます

料理漫画研究家としてのあれこれをここに書いていこうかと思います。 お仕事のご依頼はkei.sugimuraあっとgmail.comまで!

「このマンガがすごい!2014」でこっそり「この料理漫画がすごい!」やりました

このマンガがすごい! 2014

このマンガがすごい! 2014

このマンガがすごい!2014」において、僕も意見を求められたので投票しております。オトコ編とオンナ編とどちらにしようか悩んだんですが、これはオンナ編だろうと挙げたものが掲載誌の関係でオトコ編であることが多かったりしたのでオトコ編に投票させていただきました。

僕が投票するからにはもちろん料理漫画です。料理漫画以外の投票はしておりません。というわけで、今回はどうしてそういう順位にしたのかの裏話をば。実際に僕が選んだものがトータルの順位でどうなったかとかは是非このマンガがすごい!2014を読んで確認していただけたらと思います。

なお、時期が近いときに書いたこちらの記事と併せて読むと面白いかもしれません
女子のための食欲をそそる「グルメマンガ」ベスト5! という記事をダ・ヴィンチ電子ナビ様に寄稿しました - 料理漫画を研究してます


1/17追記
すみません。ちょっと上は表現を間違えておりました。
(「僕が投票するからにはもちろん〜〜〜料理漫画以外の投票はしていません」の部分)
僕の中では2013年度の漫画をたくさん読んだ結果、料理漫画の、特に以下の作品群(プラス何作品か)がすごいと思っていて、その中で1位から5位の順位をつけるのに苦労をしたという話のつもりでした。自分の中ではそれが当たり前に過ぎて、表現が粗くなってしまい、誤解を招いているようです。申し訳ありません。


1位:ワカコ酒

このマンガがすごい!」と言うからには、すごい漫画を選ぶ必要があります。ではいったいどういう漫画がすごいのか。売り上げがすごいとか技術的にすごいとか色々とあるとは思うのですが、料理漫画においては「読んだ後に何か食べたくなったり飲みたくなったりする」ことじゃないでしょうか。感動的なストーリーでボロボロと涙を流しても、それは感動漫画としてすごいのであって、料理漫画としてすごいというわけではありません。「作中のこれを食べたい!」「読んだらお腹がすいた!」「料理したくなる!」ということが、重要なのではないかと思うのです。

そういう観点から見て1位はもうこれしかありませんでした。ワカコ酒
もう居酒屋に行って日本酒とおつまみで一杯やりたくなってしかたないんですよ、これを読むと。もちろん黙々と食べた後には「ぷしゅーーーーーー」とするわけです。

この空気感が見事なんですよね。料理を楽しむのに過剰なうんちくは必要なく、自分が好きなお酒と組み合わせて、口の中に残る余韻も含めて味わう。それが見事に表されているのです。わいわいみんなで飲むのも楽しいし、美味しいです。でも、一人でじっくりとお酒と料理を味わう。それもまた楽しいということをワカコ酒は伝えてくれるのです。

女子のための〜〜では酒飲みの人が対象から外れてしまうという理由で3位にしましたが、やはりこの求心力というか、お腹を空かせる力が強いというか、そういった部分がやっぱり「この料理漫画がすごい!」というわけで1位にしたというわけです。

作品の詳しい解説はエキレビで!
女子だって「孤独のグルメ」するんです。『ワカコ酒』で一人酒(エキサイトレビュー) - エキサイトニュース(1/2)

ワカコ酒 1 (ゼノンコミックス)

ワカコ酒 1 (ゼノンコミックス)

ワカコ酒 2 (ゼノンコミックス)

ワカコ酒 2 (ゼノンコミックス)


2位:おしゃべりは、朝ごはんのあとで。

こちらも同じく2013年最大のヒットというか。

同じ朝ご飯をテーマにした作品には「いつかティファニーで朝食を」があります。いつかティファニーで朝食をの方は、実在のお店にフィクションのキャラクターが行って女子会をするという作品なのですが、こちらはノンフィクションで実際に行くエッセイ漫画ですね。

ポイントなのは、やっぱりエッセイ漫画というところでしょうか。エッセイ漫画ってキャラの個性がノンフィクションが混じるだけに出しにくかったりするのですが、この作品は見事にそれに成功しています。リズム感と、とぼけた感がいいんですよね。あと、料理を食べたときの感想も実にいいんです。こういうエッセイ漫画では頭ひとつ抜き出して面白いです。というわけで、「すごい漫画」2位にしました。

ちなみに! いまやわらかスピリッツで新作読めますよ!
やわらかスピリッツ - やわスピ「お・も・て・な・し」2014 | 秀良子編

2014年始のお・も・て・な・し企画なので一番最初から読むのがオススメです
やわらかスピリッツ - やわスピ「お・も・て・な・し」2014

おしゃべりは、朝ごはんのあとで。 (ビッグコミックス)

おしゃべりは、朝ごはんのあとで。 (ビッグコミックス)


3位:甘々と稲妻

3位に選んだのは甘々と稲妻。これは、妻を亡くして半年の高校教師の犬塚先生ととまだ幼い娘のつむぎが、副担任として受け持ったクラスの女の子と一緒にご飯をつくるというお話です。

実際に料理をつくる料理漫画の場合、主人公やその周りにいる人が最初から料理ができることが多いのですね。ところがこの作品では小鳥ちゃん(女子高生)も先生も料理ができないのです。いや、できるんだけれども小鳥ちゃんは刃物恐怖症で包丁がにぎれないのです。

というわけで、料理の初心者が、愛娘のために一生懸命に料理をつくる。そういう漫画なのですね。そして、ここに「料理は愛情」という部分がとても強く表れているのです。

つたない腕前ながらも何とかして愛するもののために料理を作る。思えば「高杉さん家のおべんとう」も同じような構図ですね。さらには包丁がにぎれないけれども味つけはできる小鳥ちゃんが加わることで、料理シーンにもかけあいが生まれているわけです。この辺も高杉さんところの温巳くんと同じですね。料理シーンそのものが楽しそうなのはここが秘密なんでしょう。

もちろん食べるシーンもこれまた実に美味しそうに食べるのです。愛娘のつむぎちゃんは美味しくできたなら実に美味しそうに食べるし、その顔を見るとまた料理しなきゃ! という気持ちになるのですね。

とにかく「料理をしたくなる」力が2013年に出たコミックスの中では一番すごい作品でした。なので選んだというわけです。

甘々と稲妻(1) (アフタヌーンKC)

甘々と稲妻(1) (アフタヌーンKC)

甘々と稲妻(1)

甘々と稲妻(1)


4位:鬱ごはん

「すごい!」と言える料理漫画の度合いでは、こちらが一番かもしれません。これはすごいです。アンチ料理漫画と言えるのでしょうか。

毎日ひとり鬱々と料理を食べる主人公。何もしないでそのまま食べればいいのに、ついつい少しでも美味しくしようとして何かちょっと加えて失敗し、より鬱になるという、読むと食欲がなくなっていく料理漫画です。いや、面白いんです。面白いんですけれども、食欲がなくなってしまうのですね。

前向きになればなるほど失敗していくというのは、最近の漫画界全体を見渡してもなかなかいないんじゃないかと思います。

癖がありますが、間違いなく「すごい」料理漫画なので、ちょっと試し読みとかをしてから読むといいかと! 

試し読みのページとかも含めた紹介はエキレビにしております。
他人の家で食べる飯は美味しくない、ひとりで食べたい『鬱ごはん』(エキサイトレビュー) - エキサイトニュース(1/3)


5位:放課後のトラットリア

最後はこちら。1位にお酒の漫画、2位にエッセイ漫画、3位に料理をつくる系の漫画、4位にアンチ料理漫画と選んできて、じゃあ5位にふさわしいのは何だろうかと考えたら、ファンタジー系の料理漫画が思い浮かびました。

異世界で、こちらの世界のものとは違う架空の素材を使って料理をするというカテゴリーには「トリコ」があります。もちろんトリコも素晴らしい作品なのですが、今回はこちらの放課後のトラットリアに軍配をあげてみました。

というのも、きちんとした料理の手順が理にかなっていたりして、異世界の料理でも納得がいくんですね。この辺はさすがです。なので、なんとなく味が想像できるし、実際の料理との比較みたいな感想も出てくるのでますますわかりやすい。でも、基本的に異世界の食材なのでありそうで食べられない。その辺のバランスも絶妙なのです。

橘高校料理部の4人の女子高生がふとしたおりから異世界に紛れ込んでしまうというお話です。その世界ではたびたびこちらの世界からのお客さんが現れ、さまざまな技術や文化を伝えていったという伝承があったのでした。4人は料理をすることで一定の地位を得るのですが、それによって政争にも巻き込まれる……のかな? というところです。疑問形なのはまだ続きが出ていないからですね。

Webの方の更新も止まっているし、コミックスも延期しまくって出てくるのが遅かったし、すごく期待しているんですがどうなるのかなあ……ということで、そういう意味でも目が離せない作品です。

放課後のトラットリア

放課後のトラットリア 1 (メテオCOMICS)

放課後のトラットリア 1 (メテオCOMICS)