料理漫画を研究してます

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鬱ごはん 1巻

この漫画をどういうカテゴリーに入れたらいいのかはとても難しい。主人公の就職浪人鬱野(ウツノ)たけしがお腹が空いた時にご飯を食べるという漫画なのです。なのですが、まずウツノはあまり料理に興味が無かったりします。

「食事とは本来排泄と同じく隠されるべき行為ではないだろうか?」

なんて言ったりしているので、他の人とご飯を一緒に食べるのが苦手。というか、”食”がとにかく苦手なんですね。「選びたくない」と言ってドーナツ(ミスドっぽいお店)を選ぶのが苦手。店員とコミュニケーションをとるのが苦手。高級ハンバーガー屋さんで飲み物が足りなくなりお冷やが欲しいけれどもやっていませんと言われるのが怖くてウーロン茶のSを頼んでしまう。そんな主人公なのです。同じように一人で食べるにしても、孤独のグルメ花のズボラ飯のように料理を楽しむこととは一切無縁というか、正反対ですね。

一人孤独にウツノが黙々と食べるのではなく、ツッコミ役がいます。イマジナリーフレンド(空想上の友だち)である黒猫です。もうこの時点でちょっと鬱な危ない人ではないかという気がしなくもないですが、まあそんな感じです。はい。

黒猫のツッコミをくらいつつ、食事をとにかく楽しめない。楽しむべく多少の調理工夫をしようとすると大抵失敗する。まあでも、リア充とは言えない一人暮らしの男子の食事ってこういうものが多いんじゃないでしょうか。なんて思っちゃったりします。ちなみにほとんどが、作者である施川ユウキ先生の実体験がもとになっているとのこと。あ、でもウツノはなんだかんだ悠々自適に鬱々としたものも含めて人生を楽しんでいるので哀れまないでと後書きに描いてありました。

こんな風に書いていると、この作品をお前は楽しめなかったのかと言われそうですが、面白いです。面白いんですよ。共感したりしちゃって食欲がわかなくなったりする部分があったりしても、面白いものは面白いんです。施川ユウキ先生の独特の感性でシュールに淡々と語られる漫画は、がんばれ酢メシ疑獄!!の頃から好きなのです。

連載当初は22歳だったウツノも36話では26歳ということが判明。3年以上就職浪人を続け、こういう食事を続けていると思うと……まあ、ある意味現代社会を映しているのかもしれません。ところで作中でも現実でも1話から1巻最後までが3年かかっているということは、2巻が出るのは3年後でしょうか。待ちます。待ちますよー。

2013年4月19日発売